COPDについて
COPDとは
慢性閉塞性肺疾患のこと。いままで肺気腫、慢性気管支炎といわれていた2つの病気進行して
呼吸機能の低下を起こした状態の総称です。
2つの病気をまとめた理由は、肺の病気と気管支の病気という違いはあっても、
どちらも呼吸器において慢性の炎症性の病変がゆっくりと進行し、
呼吸が苦しくなっていく病気だからです。
また症状や治療方法が、ある程度共通しているからです。
COPDは、高血圧症、糖尿病と同じくらい、非常にありふれた病気で、
90%が喫煙者で、いまや肺の生活習慣病といわれています。
WHOによると1990年の時点でCOPDは死因の第6位でしたが、
2020年には世界の死因の第3位になると予想されています。
日本でも2009年の死亡原因は7位で2006年8位から
見ても徐々に増えています。今後もランキングが上がっていくものと予想されます。
肺気腫とは?
肺の最小単位の小葉が破壊されて、もとに戻らなくなった状態です。
小葉が実際破壊されいるかどうかは肺の組織を確認しなくてはなりません。
組織を調べることは、患者さんにとって非常に大変なことです。
そこで、苦痛の少ない、診察、胸部X線写真、肺機能などで診断します。
慢性気管支炎とは?
2年以上咳と痰がつづく病気です。
太い気管支の上皮にある気管支腺、さらに粘液の分泌細胞に炎症が起きた結果です。
たばこや大気汚染などが原因です。
何が慢性的に閉塞するの?
気道が閉塞するのですが、完全に閉塞する一歩手前の状態です。
思いいっきり速く息を吐いても、息を吐くことに制限がかかるという意味です。
息を吐く速さが遅くなり、胸いっぱいに吸った空気を1秒で吐き出せる息の量も減ります。
肺気腫や慢性気管支炎の人でも肺機能が正常であれば、COPDとはいえませんが、将来COPDに
なるかもしれません。
COPDと気管支ぜんそくの違いとは?
どちらも気道が狭くなる点では似ていますが、ぜんそくは、症状が発作性であり、
治療によってもとの状態に戻る点です。
つまり、COPDはつねに気道が狭くなっているのに対して、ぜんそくはときどき狭くなる状態です。
ぜんそくの特徴は安静時にゼーゼーないしヒューヒュー音がすることです。これは発作時でも、
肺は破壊されていないので、息を吐く力がしっかりしているためです。
ぜんそくの炎症は肺胞ではなく、気道を中心に起こります。通常のひとでは感じないような刺激に
対しても反応して、気道が狭くなると発作を起こします(気道過敏症)。
COPDの症状は?
中年以降の喫煙したことのある20%に発症しており、年齢が上がるにつれて発症頻度が高まります。
咳や痰がでる、風邪が治りにくいなどから始まり、息切れの程度が徐々に進みます。
咳、痰、息切れを年齢のせいと思い込み、放っていませんか。息切れは病気で起こるのです。
健康にまったく問題がない人は、90歳近くなっても、日常動作で息切れを起こしたり、
自分のペースでなら坂道で途中、息切れをおこすことはないようです。
もちろん、息切れはCOPD以外の原因、たとえば心臓が悪い、貧血がある、
精神的な理由などでも起きます。
COPDの場合の息切れは、坂道や階段を上がる、荷物をもつなどの負荷がかかったときに起きます。
実は、自覚症状が出たときは、すでに中等症以上になっていると考えてください。
安静にしていても息切れがするときは、COPD以外の病気を考えてください。
呼吸器の病気の併存
併存症のなかでも肺がんは多くみられます。またかぜやインフルエンザなどの感染症にも
COPDを悪くする原因となります。
呼吸器以外の併存症
虚血性心疾患:狭心症や心筋梗塞など
骨粗鬆症:喫煙や息切れによって起こる運動不足、栄養障害なども関連
睡眠障害:COPDでは血中の酸素が減る低酸素血症が起こることがあります。
睡眠障害に対して安易に
睡眠薬を服用すると呼吸抑制を起こすこともあるので注意が必要
糖尿病:慢性的に血糖値が高くなる病気でCOPDの患者さんにも少なくない
うつ病:息切れが強くなると、外出も思うようにできないため、落ち込みやすくなる
COPDの診断
- 肺機能検査(スパイロメーター)
努力性肺活量(ゆっくりと吐けるだけ吐いた空気と吸えるだけ吸った空気の総量)に対する
1秒量(一気に吐き出したときの最初の1秒間で吐き出せた空気の量)の割合を1秒率といいます。
1秒率が70%未満であれば、COPDの可能性が高いと判定されます。
当院では肺年齢もわかる肺機能検査を行っています。 - 胸部X線撮影
X線に病変が現れるのは、かなり進行してからなので、早期に発見するのは難しい。
進行したCOPDでは上下方向に肺が伸びきった状態が見られます。これにより心臓が細長く見えます。
COPDの治療?
- まずは禁煙。いったん発症すると完全に治る病気ではありません。
しかし進行を起こらせるには禁煙は絶対に必要です。自分で禁煙できないかたは
禁煙治療もおこないましょう。 - 気管支拡張薬の吸入(抗コリン薬 β刺激薬)
作用が速く、副作用や相互作用が少なく、少量の投与で済む点で第一選択薬となっています。 - 気管支拡張薬の内服(テオフィリン製剤)
- ステロイドの吸入や抗ロイコトリエン薬、去痰剤など
- 在宅酸素療法
呼吸状態が著しく低下し、血液中の酸素が不足した状態になった場合に行います。
参考文献:1)中高年のたばこ病COPD 巽浩一郎 (株)保健同人社 2)きょうの健康 肺の生活習慣病 COPD NHK出版